孤高
誰もいない海の真ん中。
太陽の光が燦々と降り注ぐ中、
ゆったりとカヤックを進めます。
水上は本当に静かです。
波打ち際の音も遠くです。
鳥や船の音も遠くです。
何処までも海原と断崖が続いています。
そんな日のカヤックは
快適です。
とても楽しいです。
でも、それだけじゃないんですねぇ。
怖いんです。
どんなに晴れわたった日中でも、
怖いのです。
なんというか、
ゾンビが水中から湧き上がってくる、
そんな恐怖とはまるで違います。
畏怖、というか自然にのまれるような恐怖、
自身ではどうにもならない恐怖を感じます。
壮大な自然に対する畏敬の念を心の底から感じる瞬間です。
海ではうねりがあります。
波のない凪(なぎ)の日でも
ゆったりとしたうねりはあるものです。
そいつがまた怖いのです。
ゆっくり持ち上げられ、ゆっくり沈んでゆく。
ただそれの繰り返しですが
それがとてつもなく怖い。
孫悟空じゃないですが
なにか大きな掌の上にのっているような
なにかに翻弄され、でも守られているような、
自分の小ささを実感できます。
カヤックは
一人で行くより多数で行く方が楽しいかもしれません。
思い出も共有できます。
その上、多人数の方が安全だと思います。
それはわかっているのですが
単独行もいいものです。
一人出ないとなかなか感じられない世界があります。
一人で水上を行くと
時が止まったような瞬間にもたくさん出会えます。
パドルについた水滴もスローモーションのように見えます。
日差しもまるで粒がみえるようです。
その粒のあたたかさも目で感じとれます。
風がくるのが見えます。
風に押されたり押し戻されたりします。
透明な水の中をのぞいてみると
自分が空に浮かんでいるような錯覚を覚えます。
運がよければ海原をゆく魚たちにも出遭えます。
無人島に上陸しカヤックを引き上げ
砂浜に腰掛け本土を見つめる。
砂の感触がとても気持ちいい。
上空にはノスリが旋回しています。
なにか考えているようで
なにも考えていない自分がいます。
時々ふと、日常の自分が鎌首をもたげて
時間や宿泊地、仕事のことなど考えてしまいますが
またすぐになにも考えていない自分に戻ります。
そして
目的地なんてないけど
また漕ぎ出します。
ひとり。
孤高。
気高く、ひとり。
かっこつけすぎですね。
でも時にカヤックはそんな気分にもしてくれます。
|
|