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表紙
(中央上部 その他に 紙魚 〈しみ〉 の跡) |
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目 次
題辞 (参議 菅原世長) 自叙 (竺顕常) 李于鱗 序 巻一 五言古詩 十四首 巻二 七言古詩 三十二首 巻三 五言律詩 六十七首 巻四 五言排律 四十首 巻五 七言律詩 七十三首 巻六 五言絶句 七十七首 巻六 七言絶句 百六十八首 補遺 |
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見返し (紙魚の跡が貫通している)
右上の朱印 : 「東叡王府蔵版」 右下の朱印 : 「翻刻必究」 |
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題辞 (菅原世長)
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本文 (巻一)
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| 本書の一部紹介 |
| 題辞 および 自叙 |
唐詩解頥題辞
大典禅師、向(さき)に既に 「唐詩彙(集)注」 を著す。 援引該博たり。 尋(つい)で、更に 「解頥」 七巻を撰す。 繁を刪(けづ)り、要を擷(つみ)て、風旨(教え示す)を発揮す。 嗚呼(あゝ)、禅師の文に於ける、その緒余(学識の一部)の已何(なん)ぞ学者(学ぶ者、学習者)に恵むこと、深切(適切) 著明(明解)なるや。 夫(それ)、注疏家の衍(ていねいさ)を尚(尊)べば、学者 其の要を難くし、簡を尚べば、学者 其の審を難くす。 乃(すなは)ち今、唐詩に二解有らば、蓋(なん)ぞ罄(尽)さざる無からん。 是より先、東叡大王 「彙注」 を賜ひて、之を府中に刊せしむ。 今また 此の書を進むるに、則ち 命有ること初めの如し。 余、不敏(英敏でない)と雖(いへど)も、其の端に再叙し、海内の詩を学ぶ者をして、必ず益を二解に求むるを知らしめんとす と云ふ。
安永丙申(五年、1776年) 三月 丁丑
参議 菅原世長 題す
自 叙
凡(およ)そ古人の詩を解するは、字より句へ、句より章へと、必ず其の訓を審にし、其の調を叶(ととの)へ、其の情意を承け、其の事故を覈(しら)べ、反復 諷玩(そらんじて味わう)、氷泮然(氷が溶けるような状態)たるが如くにし、而(しか)る後に已(や)む。 一解を得ること有れば、輒(すなは)ち忻(欣)然とし、以て 未だ発(明らかにする)せざる所を発すと為し、此を考へて彼を繹(たづ)ねず、其の通ずる所を持し、以て其の未だ通ぜざる所を軋(むりに当てはめる)し、一意に引き合はせんとするは、此れ 注疏家の病にして、独り詩のみならず。 古を善解するの要は、己を虚しくして、以て一解を得ること有るを待つに在り。 姑(しばら)く是を舎(お)き、反(かへ)りて改(あらた)に考繹し、之を思ひ又思ひ務めて、其の長に就く。 隻辞も賸(むだ)と為さざらんことを欲し、片言も梗(ぎごちない)為(た)らざらんことを欲す。 夫れ然る後、古人の言を措く所以の、必ず我において怡然(完全に理解して快感を得た状態)たる所有り。 向(さき)に、余、「唐詩集注」 を著す。 既にして、其の英を搴(取)り、其の腴(ゆたかさ)を味はひ、其の要提を取り、間(まま) 或は、一二 前注の罅漏(欠陥)を補し、因て 「解頥」 七巻と為し、以て学者に便にす。 編成り、数語を弁じ、申する(述べる)に 詩を解するの法を以てす。 咨虖(ああ)、奚(なん)ぞ 独り詩のみならんや。
淡海(近江) 竺顕常 題す
| 本文 (巻一 五言古詩) |
(初唐)* 魏 徴 述 懐
中原還逐鹿 中原 還 鹿を逐ふ
投筆事戎軒 筆を投じ 戎軒を事とす
縦横計不就 縦横の計 就(な)らざるも
慷慨志猶存 慷慨の志 猶 存す
杖策謁天子 策(つゑ)を杖(つき)て 天子に謁し
驅馬出関門 馬を駆て 関門を出づ
請纓繋南越〔王〕** 纓を請て 南越〔王〕を繋( り)
憑軾下東藩 軾に憑(より)て 東藩を下さん
鬱紆陟高岫 鬱紆として 高岫に陟(のぼ)り
出没望平原 出没 平原を望む
古木鳴寒鳥 古木 寒鳥鳴き
空山啼夜猿 空山 夜猿啼く
既傷千里目 既に 千里の目を傷しめ
還驚九折魂 還( 九折の魂を驚す)
豈不憚艱險 豈(あに) 艱険を憚ざらんや
深懐國士恩 深く国士の恩を懐ふ
季布無二諾 季布に 二諾無く
侯贏重一言 侯贏は 一言を重んず
人生感意氣 人生 意気に感ず
功名誰復論 功名 誰( ぞ論ぜん)
* ( 「初唐」 は、顕常による追加。)
- 述懐
- 唐の高祖、武徳八年(625年) 魏徴に山東を宣慰せしむ。 此れ蓋し、東のかた潼関を出る時作る所ならん。 「唐詩紀事」 に、題を 「出関」 に作る。
- 中原
- 中国を謂ふ。
- 還
- 循環の義。
- 逐鹿
- 「史記」 蒯通の語に、鹿を国家に比す。 此れ、隋末の乱に、群雄並に起ち 相争ふを指すなり。 〇 按ずるに、鹿の音は禄に通ず。 いわゆる天禄なり。
- 投筆
- 後漢の班超、筆を投じ歎きて曰く、 「大丈夫は、当に功を立て以て封侯を取るべく、安(いずく)んぞ能く筆研を事とせんや」 と。
- 事戎軒
- 兵車なり。 文を舎(捨)て武を務むるを言ふ。
- 縦横
- 南北を縦とし、東西を横とす。 戦国の時、六国は東に在りて南北に亙り、秦独り西に居る。 蘇秦は六国に説き、合せて秦を擯(排斥)せしむ。 故に合従と曰ふ。 張儀は秦の為に六国に説き、西に秦に連らしむ。 故に連衡と曰ふ。 従は縦に通じ、衡は横に通ず。
- 計不就
- 群雄に遊んで事の功を成さざるを謂ふ。
- 慷慨
- 激昂の意。
- 志猶存
- 終(つひ)に唐主に帰する所以(ゆゑん)。
- 杖策謁天子
- 漢(後漢)の光武(光武帝)河北を安集(平定)す。 鄧禹 策を杖て追求(あとから追いかける)し、帝の徳を称し、己の志を叙(の)ぶ。
- 請纓繋南越〔王〕
- 漢の終軍(将軍の名)南越に使す。 「願くは長き纓(冠のひも)を受け、必ず南越王を覊(つな)ぎ、闕下に致さん」 と請ふ。
** ( 「王」 は、顕常が補った字。)
- 憑
- 據なり。
- 軾
- 車前の横板。 未だ車を下りるに及ばずして、功 成るなり。
- 下東藩
- 酈食其 漢の為に齊王に説て、東藩と称せしめ、軾に憑りて齊の七十余城を下す。 〇 四方の邦国は、京師に於て猶 藩屏のごとし。 〇 是の時、突厥・頡利の諸夷 中国を侵乱す。 魏(魏徴) 復(また)山東の地を安輯(平定)す。 故に、二句以て己が慷慨の志を叙ぶ。
- 鬱紆
- 盤鬱紆曲。
- 出没望平原
- 山路鬱紆の間より、故(ふるさとの)平原の出没するを望む。
- 古木鳴寒鳥 空山啼夜猿
- 悲凉(悲しくさびしい)の状(さま)。
- 既傷千里目
- 望に応ず。
- 九折
- 坂道折曲。
- 魂
- 陟に応ず。 〇 漢の王陽、益州に刺(地方官)たり。 九折の坂を過ぎるに、険を憚て之を去る。 孝を思ふなり。 後に王尊、益州に刺たり。 復(また)是の坂に至るに、馭を叱して之を駆す。 忠を思うなり。
- 深懐国士恩
- 戦国(戦国時代)の予譲の語。 魏の本伝(旧唐書、新唐書の魏徴伝)にも亦 是の言有り。
- 季布無二諾
- 史記の季布の伝に出づ。 *** (前述したように、この注は 出典を示すのみである。 下の注も同様。)
- 侯贏重一言
- 信陵君の伝に出づ。
- 人生感意氣
- 恩顧を謂ふ。
- 誰
- 何(なんぞ)と訓ず。
- 復論
- 通篇 毎句みな上を承け、下を起す。 味う可し。
終
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