うつせみ 
1995年10月28日
             好き嫌い

 いくらか深酒の機会が先日社内であって、仲間から「松下さんはAさん が好き、Bさんは嫌い」と社内数名の人名が言及された。

 テレビタレントは「どういうタイプがお好きですか?」と問われても答 えない。好きだと言われなかった人からの反感を買うからであろう。私は テレビタレントではないが、同様な心理が働いてこの時肯定も否定もしな かった。しかし素面になってから考えると、黙っていることで言及全体が 肯定になってしまった恐れもあり、同席のメンバにだけは何らかのコメン トをしておこうと思った。ところが書き始めてから気が変わり、「うつせ み」として少し広い範囲に配布してもよいと思い直した。

 人には好き嫌いがある。私は比較的好き嫌いは無い方だが、それでも本 音の所ではある。しかしまず、人間としての好き嫌いと、仕事仲間として の好き嫌い、つまり信頼度とは全く別物であることを指摘しておきたい。 紺野美佐子より鈴木杏樹の方が好きだが、部下に持つなら断然紺野美佐子 の方が頼りになりそうだ。「Bさんが嫌い」のコメントは仕事上の信頼度 では図星であったが、人間としては中立よりも好きな方に入る。

 濃密な付き合いが下手な私だが、崩れキリスト者の一人として人間愛は 濃い方だし、短所よりも長所を見ているつもりである。実際私が人間的に 嫌いな人は稀である。強いて言えば、平均以上ながら大したことはない能 力・知識などを鼻にかけて天狗になっている人はあまり好きになれない。

 仕事上の好き嫌い、つまり信頼度は、比較的明確である。しかしデフォ ルトの初期値は平均以上の信頼度からスタートし、実績学習効果で信頼度 を調整する傾向がある。一度烙印を押されたら百年目という厳しさはなく、 実績によるプラス方向への修正は容易だと自分では思っている。

 では実績とは何か? それは、

1.現状を正しく把握し、それを良しとせず、やるべきことを自ら見出し、
2.有効な施策を案出し、
3.困難や不慮の事態が起こっても結局は着実に実行してしまう、
そういう実績である。但しこの3点の成果は能力で割算される。能力の高 い人は大きな成果がないと高評価にはならないし、凡庸な人はそれなりの 成果で高評価となる。努力家のつもりの私としては、能力の大小に関わら ず一生懸命やる人には弱い。

 もう一つ、真のキリスト者は勿論、私のような偽物でもそうなのだが、 「私は馬鹿、悪人、弱者。私は間違った。だけど助けて。」と言われると 一番弱い。逆に間違ったことを隠し正当化する人や、私を騙そうとする人 は(完全に騙されれば判らないが稀なので)仕事上は嫌いである。

 人間的には好きでも、仕事上信頼度が低いのは次のような人である。

1.現状把握ができていないか、現状に満足して改善意欲の無い満足型、 あるいは満足か否かを考えることすら自らしない受動的なロボット型、
2.問題に対して自分のやれること、やるべきことが多少ともあるのにそ れを棚に上げて、他人、制度、会社などを責める転嫁型、 あるいは出来もせず本当はやる気もない施策を、一時逃れやその場の格好 良さのために案出し、言うだけでやらない無責任型、
3.困難が生じると早速成果が出ないことの理由にする諦め型、 あるいは自ら取り組むべき困難に対して努力せず安易に他の支援を求める 支援要求型、 あるいは成果が出ない理由を探してばかりいる言い逃れ型、

などである。

 当社TJの歴史を考えると、創世期は別として中期発展期には下請業務 で伸びてきた。理想的な下請社員はロボット型であったのかも知れない。 その中で少し気の利いた人は諦め型、支援要求型などになりやすかった歴 史もあったのではないかと推察し、そういう個人には大いに同情と人間愛 を持っているつもりである。しかし歴史はともあれ、人間愛はともあれ、 これからはこうした下請根性を払拭した人でないと仕事の役には立たない。 実は自分自身が堕落せぬよう日々一番気にしているところでもある。以上