|
■品確法ニュース 第11号
住宅性能表示制度の改善案の提案
今回は、住宅政策論の観点から、現行の住宅性能法事制度の問題点を指摘し、それに対する改善案の提案を行います。
■住宅性能表示制度の導入に際しての問題点
品確法及び住宅性能表示制度の導入によるメリットは多いのですが、昨年10月から今年の3月末までの住宅性能評価の利用実績をみると、戸建住宅で設計評価1542件、建設評価78件であり、制度以前の見込みにくらべて少なくなっています。
これは住宅性能表示制度の精神は正しくても、その導入方法が不十分であったためと考えます。
1.住宅性能評価の費用は住宅取得者の全額負担
マンションの場合は販売会社などが費用を負担しますが、その分はマンション価格に反映するので、結局マンション住宅の購入者の負担になります。いずれにせよ、消費者が全額負担です。
そもそも不良業者を排除して違法である欠陥住宅を建てさせないとか、建設技術の客観的な基準をつくり消費者に明確にするということは、本来は生産者が業界として取り組み、その費用を負担すべきことです。
それなのに消費者である住宅取得者に対して「欠陥住宅でないことを証明するから、お金をだしなさい」という状態になっています。
行政にも問題があります。消費者である住宅取得者に全額負担させるのは、消費者保護の流れに逆行するからです。
2.住宅性能評価を住宅取得者の任意(選択)制
消費者である住宅取得者に全額負担させたうえで、全新築住宅にたいして必須の制度とすることは、いかに厚顔な行政担当者でも気が引けたようです。住宅取得者の任意選択の制度としました。
しかし、住宅所得者はすでに目一杯住宅ローンを組むなど資金的に余裕がないため、選択制である住宅性能表示制度の利用が進んでいません。
また、全項目が必須ではなく、一部選択項目があり、別途追加費用を住宅取得者が負担することになっています。例えば、住宅性能表示制度を利用し、注目されているホルムアルデヒドの検査をしてもらおうとしても、これは選択項目になっています。マンションなどで特に問題になる騒音・振動などの「音環境」も選択項目です。
結果的に、なんだかんだと理由をつけてお金を取ることになり、住宅取得者から敬遠されても仕方がありません。
3.コストからみて安すぎる性能評価料
性能評価料の水準については、専門技術を持った技術者が、他人の書いた図面をチェックをし、現場を数回訪問し各種の計測をして分析評価の作業を行えば、コストは人件費だけでも10〜20万円程度は軽く越えてしまう。見積書を書いたことがある人なら、どんな業界の人でも理解できると思います。
しかし制度が発足する以前から国土交通省は、評価料は10〜20万円程度になると公言し、結果的に評価料を低く抑え込んでしまいました。ようするに、住宅取得者の全額負担である以上、価格が高ければ利用が少なくなるのは明らかだからです。
この結果、住宅評価を行う指定住宅性能評価機関の経営は、主要業務である性能評価料での利益率が低く、採算ベースぎりぎりで運営せざるえない状況と推察しています。
こうした状況から、次のような弊害が今後発生する恐れがあります。
イ)評価業務の手抜き
利益率が低いのですから、件数をこなす必要があります。いわゆる薄利多売です。
しかし、効率的に評価件数をこなすには、1日に数カ所も現場を回る必要があります。そこで、検査がおろそかになったり、施工会社と口裏を合わせて、行っていない現場で検査をしたことにする「カラ出張・カラ検査」をする評価員が出てきてもおかしくない背景があります。
「手抜き工事」に「手抜き評価」が重なると、住宅取得者は何のために評価料を払ったのか、国は何のために新制度を創設したのか分からなくなります。
ロ)評価機関と大手マンション会社との癒着
評価件数を稼ぐ最も簡単な方法は、大規模マンションの評価業務を請け負うことです。同じ現場で、数十戸あるいは数百戸の件数を対象にできるので、評価業務のなかでは最も利益率が高くなると想定されています。したがって、評価機関による大手マンション会社からの受注競争が激しくなることが考えられます。
そこで、大手マンションから請け負った物件について、評価機関による性能評価費用の大幅なディスカウントの実施などが考えられます。また、あってはならないことですが、評価に手心を加えたり、評価料の一部を大手マンション会社の担当者へキックバックするなどの背任行為を誘発する恐れがあります。
わが国には、旧大蔵省や今の外務省のような直接的に国益を担う超エリート集団であっても、組織ぐるみで関連業者と癒着するのが当たり前という風土があります。今後は、評価機関への国土交通省の役人の天下りとともに、大手マンション会社からの役員の天下りが考えられます。
健全であるべき第3者機関が、腐敗組織にならないよう十分な監視が必要でしょう。
ハ)交通の便が悪い地域の住宅の評価業務の問題
個人施主の注文住宅の評価業務は、評価機関にとって最もコストがかかる物件になると推測されます。特に県庁所在地などの都市から離れた地域の物件は、現場に通うことだけでも1日がかりになる場合も考えられ、また高速道路代金やガソリン代などの交通費が多額になります。そこで、交通の便が悪い地域については、評価機関が割増料金を請求したり、評価業務を断ったりなどの事態が想定されます。
こうした事態は、利潤追求を行う民間企業(評価機関)の立場を考えれば致し方ないものですが、「法律で定められた制度については、国民は平等な負担で受けられる」という法の公平性の原則からはずれています。
民間企業(評価機関)の良識に委ねるというだけでは、法律に不備があると言わざる得ません。
4.建築確認の検査や住宅金融公庫の審査との調整ができていない
新築住宅建設に関しては各種の検査・審査があります。建築確認の検査、住宅金融公庫の審査などです。住宅性能評価を受ける場合は、さらに別途の検査を行う必要があります。そのため、住宅取得者は各種の検査の日程調整などによって工期が長くなるなどの不利益を被る可能性があります。
住宅性能表示制度の利用は、良好な住宅建設を推進することになるので行政としても望ましいことです。
住宅取得者が住宅性能評価を受けるにあたって、工期の長期化などの不利益を被らないように、施策を準備することは当然のことです。行政は、各種検査・審査の簡略化などで工期が短縮化されて利益を享受できるような仕組みづくりを早急にすべきです。
■住宅性能表示制度の改善案の提案
1.評価費用の一部を住宅供給側も負担する
イ)目的
・住宅取得者の費用負担を軽減して、住宅性能表示制度の利用促進を図る
・住宅供給側も費用の一部を負担することで、良質な住宅供給のイメージづくりを図る
・上記の結果として、消費者の住宅取得マインドを喚起する
・住宅供給側と需要側がともに費用を負担することで、本制度を全ての新築住宅に義務づける
・新産業である評価機関の経営の安定化に、住宅業界として貢献する
ロ)費用負担モデル
私たちが提案したいのは、以下のような費用負担の仕組みです。
注文住宅で現在の評価料は15万円とします。その場合のお金の流れは次の通りです。
◎住宅取得者(15万円) → 評価機関(15万円)
住宅業者も10万円負担し、その分住宅取得者の負担を5万円減らし、同額負担とします。
すると、お金の流れは次のようになります。
◎住宅取得者(10万円)+住宅業者(10万円) → 評価機関(20万円)
-5万円 +10万円 +5万円
評価機関の受け取る評価料が20万円に増加しますが、その分は選択項目を全て必須として行うものとします。
ハ)モデルの問題点
評価機関のコスト構造が不明のため、どの程度の評価料が本来望ましいのか算出できませんでした。あくまで、住宅取得者と住宅業者が等分に負担するという例です。
制度として住宅業界全体で評価料を負担するというのは、いろいろな抜け道がありそうで、現実的には難しい感じがします。
住宅業者が10万円負担しても、その分は住宅価格に転嫁され、結局は住宅取得者の負担になると考えられるからで、これを制度的に防止する手法が分からなかった。
国土交通省や業界団体の方で、いいアイディアをお持ちの方はいませんか。
ニ)現実的な対処として・・・技術に自信のある住宅建設業者への提案
技術力に自信がある住宅業者なら、上記のような考え方を次のような販売促進に利用することができます。業界の意思統一は困難が予想されますので、個々の企業でいち早く取り組んで優位に立とうという戦略です。
住宅着工件数も下降気味ですし、想像を絶する大事件が起こる時代になりました。消費者マインドを喚起するためにも、思い切った手段で生き残りをかけていく戦略も必要でしょう。
◎「住宅性能評価料の半額キャッシュバック」キャンペーンの提案
評価料の一部を負担することで、住宅供給側としても良い住宅を建てようという意欲を示すものです。「評価料の半額」が分かりにくければ、「10万円」にしてもよい。
住宅性能評価を受けない施主は、損をしたような気分になると思います。
条件として、施主(住宅取得者)に、以下のような販促活動に協力してもらいます。
・カタログ、広告チラシなどの販促資料への使用(もちろん匿名。住所も伏せる)
・住宅雑誌などの取材には積極的に応じてもらう
・新規のお客さん向けのモデルルームとして利用させてもらう(ただし施工完了直前のみ)
2.建築確認の検査や住宅金融公庫の審査との調整を図り簡略化する
住宅取得者が性能評価を受けるにあたって、各種検査・審査の簡略化などで有利になるように、次のことを提案します。このことは住宅性能表示制度の利用促進にもつながります。
イ)建築確認の検査と住宅性能評価の作業を一緒に行い、時間を短縮する
評価機関に建築確認の検査作業も一緒に委託すれば簡単に可能。
住宅取得者にとっては工期が短くなるので、利益は大きい。
ロ)住宅性能評価で一定以上の評価を受けた住宅を自動的に公庫の融資対象にする
公庫の面積要件などは現在の住宅性能評価にないので、これを加えた審査を評価機関が行うようにする。
その分の費用は審査代行料として、公庫から評価機関へ支払えばよい。評価機関の経営安定化にも貢献できる。
なお、指定住宅性能評価機関の兼業禁止業種に、金融業を加える必要があります(審査と融資を同一の団体が行うことを禁止するため)。
◎住宅金融公庫の存続と住宅性能表示制度の関係
現在特殊法人民営化の方針を受けて、住宅金融公庫の存続が話題になっています。
エコノミストを中心に「融資部門は不要、審査部門は優良住宅を増やすために残す」などと言っていますが、エコノミストは金融機関出身者が多く、住宅業界の事情や品確法には無知です。
住宅性能表示制度が必須の制度であれば、多少の手直しで、住宅金融公庫の審査部門こそ不要にできます。もし評価機関に公庫の審査ができないというのなら、そもそも性能評価業務もできないはずです。
30年以上の長期の住宅ローンに民間金融機関が参入できるなら、評価機関(審査部門)と民間金融機関(融資部門)の組み合わせで、住宅金融公庫の代替は可能です。
逆説的にいうと、住宅金融公庫を存続させるためには、住宅性能表示制度を全住宅を対象とした必須制度にせずに選択制にすることで評価機関の活躍の場を制限することが必要条件でした。
公庫を存続させることが第一優先に考えられ、そめのツケが評価機関と住宅取得者へ回され、住宅性能表示制度を不十分なものにし、さらに日本の住宅政策全体をゆがめているのです。
■おわりに・・・評価機関の活躍に期待しています
「構造改革」に抵抗することに熱心で施策展開が進まない官庁の現状をみると、現行の住宅性能表示制度の早急な改善は期待できません。
そこで、本制度が定着し、よりよい方向で活用されていくかどうかは、第3者機関である評価機関の良識ある行動に頼るところが大きいといえます。住宅着工が低下傾向を示すなかで、全ての評価機関が経営的に厳しい状況にあることは容易に想像されますが、踏ん張っていただきたいと思っています。
2001.9.20
情報環境フォーラム 渡辺 雅宏
品確法登録検査員 池田 晴哉
|