てつさん放浪記 <人間ドック編>


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 いやぁ、まいった。
マジでゲロ吐くかと思った。
つい先日、人間ドックで飲まされたバリウムの話。

人間ドックは満34歳からというので、今年が初めて。
てつさんはまだ、胃カメラを飲んだことがない。
てつさんは酒飲みで、吐き慣れちゃっている。
だから、意識的に吐こうとしない限り喉に指を突っ込んだだけでは
吐けないのを知っている。
てつさんは思った。
(胃カメラっちゃぁ、意識的に吐こうとせずに喉に指だけ突っ込ん
 だあの感触と似ているのかなぁ?)

 ×

 人間ドックっちゃぁ、どんなんだろぅ?

ま、不安と言うほどの不安じゃなかったんだが。
前日は休みを取って気分よくドックを受けようと思ってたのに。
課長が会議を入れちめぇやがんの(\/)。
しかも、定時後は懇親会と称した飲み会だものなぁ。
…ぶつぶつ。

 ×

 人間ドックの前日は、午後9時以降、何も飲み食いしちゃいけな
いんだと。
水や、タバコすらもいけないらしい。
…本当は。

喉がカラカラになって家に辿り着き「水、水〜」と、ザバザバ飲ん
だ。
時刻に気が付いたのが10時半。
二日酔いを防ぐには、水分をたっぷり採るのが基本。
…なのに、「本当はダメ」だと?

会議は、いい。
けれども、懇親会があって酒を飲めばこういう体調になってしまう
のは想像できたものなぁ。
しかし、結局は断りきれずに飲んだのはてつさんだもんなぁ。

でみ実は判っている。
「断りきれずに」とか、なんとか言いながら、参加したのはてつさ
ん。
「明日は人間ドックですから」と、飲むのを拒否しなかったのもて
つさん。
すべてはじぶんのせい。

なのに、やってられっか!とカンシャク起してタバコを吸ったのが
11時。
あ〜ぁ…。
酒の勢いとはいえ、我ながら情けねぇったら。

 ×

あまし、美しくないハナシだが。
近くなってしまってトイレへ。
酒のために緩んでいたか、大きい方まで。

翌朝、サンプルを採取するのに苦労したことは言うまでもない。
それがまた、シャクの種。

 ×

会議は他部署との合同会議だったから、部下一人(しかもたかが人
間ドックという)都合で設定を変更するのが面倒臭かったのは判る
んだ。
だがなぁ。
エクスキューズがあればさ、「いえ、課長の立場も判りますから」
と言うだけの余裕はあるツモリなんだけどな。

ま、なぁ。
他人のせいにしたって始まらない。

 ×

いずれにせよ、目が覚めた時点で腹ペコなのだ。
(おまけに、タバコも吸えんときているし)
そこへ持ってきて、ドロリ、ネトリとしたバリウム。
まるで、石膏を蜂蜜で溶いたような代物なんだ。

マンガで「バリウム、お変わり〜!」なんてぇのがあったが、冗談
じゃぁない。

 ×

少しづつバリウムを飲まされながら、回転式ベッドにしがみつかさ
れて、横を向いたり反対向いたり。
あるいはベッドが傾いて、頭が坂の下に向けられたり。

終いには
「はい、残り全部飲んで〜」
これがもー、ゲロ吐きそう。
その上、胃を拡張するための炭酸ガスの元を飲まされて、
「ゲップは我慢して下さいね、ゲップは」
ちぇ。言う方は楽でいいよなぁ。

 ×

 午前8時から始まった半日人間ドックも午前10時半には終わり、
食事券なるものを渡された。
聞くと、「泰正」でメシが食えるらしい。
「泰正」と言うのは、北区に引っ越してきたときから気になってい
たけれど、一度も入ったことのないうなぎ屋だ。
ウワサでは、「んまい」と評判らしい。

だがなぁ。このバリウムでタポタポの腹でうなぎ食ったってなぁ。
「あ、それと言い忘れてましたが、このお食事券で食べられるのは
11時からですので…」
つまり、あと30分はガマンしなさいと言うことか。
「とりあえず、部屋に戻るか」
 今回、人間ドックを受けたのは上飯田第一という、ベランダより
看板が見えている病院。
歩いて5分なのだ。
喫茶店で時間をつぶす状況ではないしなぁと、部屋に向かう背中に
6月の日差しがジリジリとうるさかった。

 ×

 さて、うなぎだ!
現金なもので、すっかり腹は減っている。
まぁなぁ。
バリウムは腹もちせんだろうしなぁ。

注文して、待つこと10分。
さすがに評判だけあって、んまい。

…んまいんだが。
「人間ドックという、非日常的な体験で弱らされた体力を取り戻す
 ために、うなぎを食うのじゃ」
そんな台詞が思い浮かんでしまった。
まるでオヤジな部長や課長が吐きそうな台詞だ。

自分で求めたのではないにしろ。
つまり、うなぎを食っている自分を「泰正」に見出して。

てつさんは、またゲンナリしたのだった。

おしまい

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Lust Update 1998/ 9/12